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箱根ガラスの森美術館
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点彩花文蓋付ゴブレット

『水上に浮かぶ 幻の島』
ヴェネチアの起源は、西暦6世紀半ば、蛮族に追われたヴェネト族が安住の地を求め、蔦の生い茂る沼地、魚と海鳥しか棲まない荒涼のヴェネチア諸島へ移住したと伝承されています。そしてこの時、古代ローマ時代に発明されていた吹きガラス技法が、この地にもたらされ、ヴェネチアン・グラスが始まったといわれています。時代は移りゆき、街の中心を悠々とゴンドラが行き交い、ほとりに美しい中世の館が立ち並ぶ、水の都ヴェネチア。刻々とかわりゆく運河の水面や、優雅な気品を漂わせるその街並みは、高貴ではかなげなヴェネチアン・グラスを投影しているかのように見えます。やはりこの地がこのガラス芸術を生みだし、運命を共にしてきたのだという思いにかられます。
点彩花文蓋付ゴブレット

点彩花文蓋付ゴブレット

1500年頃 ヴェネチア
型モール、宙吹き上げ
エナメル彩、金彩
高32.5cm 口径12.1cm

  濃紺の透明なガラス素地に、赤・白・緑・青色の不透明のエナメル顔料を使った点彩技法で、花文や点綴文様を坏身全体に装飾し、その背景を金泥で覆い尽くして、豪華絢爛たるルネサンス意匠に作り上げている。脚台部や蓋には、型によって吹き出した縦の稜線が重厚な格調を作り出しており、コバルト・ブルーを素地にした金梨地がその風格を一層高めている。ビザンチン時代に作られていた黄金七宝製の聖餐坏の形式を採用して、ラッパ状に開いた脚台部と坏身との間には、大小2つの玉飾りが玉房状に作り付けられており、そこにも縦稜と金泥の装飾が施されている。蓋は天蓋を思わせるように中央が高く立ち上がり、その上に玉状の紐を付け、その上に無色の2段の玉飾紐を熔着している。蓋には12稜縁の鍔と、その内側下部に落し込みの合わせ部分を付けている。
  典型的なビザンチンの聖餐坏の形式を採用しながら、点彩と金泥の焼付装飾には、イスラム・グラスの意匠と技法を導入している。15〜16世紀ヴェネチアが、地中海文化の混淆と熟成を成し遂げていた状況がみごとにこのゴブレットに表されている。
  なお、この作品は永くイタリア貴族の館に伝世されたあと、ドイツの銀行家ロスチャイルド家に伝えられていたものである。

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