風にそよぐグラス
1895年
ジュゼッペ・パロヴィエール作
ジョゼッペ・バロヴィエールを中心に結成された「芸術家集団バロヴィエール」によって実験的に作られたグラスで、19世紀末にヨーロッパで大流行した<アール・ヌーボー様式>がヴェネチアン・グラスに初めて採り入られています。
植物の茎をイメージした細くて長い、今にも折れそうなステム(脚部)の上に、頭の大きな坏身がのり、わずかなそよ風にもゆらゆらと揺れ動きます。1895年に開催された第1回ヴェネチア・ビエンナーレに出品され、ガラス工芸の常識を破る驚異の技術を駆使した奇跡のグラスとして、世界中から大きな注目を集めました。
15世紀、ヴェネチアン・グラスはそのため息が出るほどの美しさでヨーロッパ王侯貴族を魅了し、栄光を誇りました。20世紀に入り、第一次、第二次世界大戦の影響により、ヴェネチアのガラス工房は大きな打撃を受けます。また、高度な技術を継承しながらも、その造形表現に行き詰まるという停滞状態にありました。
しかしながら、一人の人物を中心としたある活動により、ヴェネチアン・グラスは見事に蘇ります。それは、従来の伝統とはまったく異なり、ヴェネチアのガラス職人と20世紀最大の芸術家たちとの共同制作により、新しいガラス芸術を誕生させるという革新的な試みでした。
ヴェネチアのガラス彫刻クリエイターであるエジディオ・コスタンチーニ(Egidio Costantini 1912〜2007)は、世界中のあらゆる分野にわたる芸術家をこの地に呼び集めました。画家、彫刻家、造形家、建築家、詩人などによって描かれた自由な発想のデザインは、コスタンチーニの監督のもと、ムラノ島屈指の名ガラス職人の手によって、ガラス彫刻として完成されました。ガラス素材はあらゆる制約から解放されて、表現の幅を大きく広げ、シンプルな造形と抑圧された色使いを特徴とした多くの作品が制作されました。
伝統的なヴェネチアン・グラスから造形芸術としてのヴェネチアン・グラスへ―、ガラス芸術に吹き込まれた新風は今日も世界の現代ガラス界に息づいています。
雄牛
1954年ヴェネチア
パブロ・ピカソ、エジディオ・コスタンチーニ作
ピカソはコスタンチーニの工房を訪ねて、自分のデッサンに基づいて制作された作品「おどけたふくろう」を抱いて、ご満悦の写真を撮っている。何事にも好奇心の旺盛だったピカソは、ガラスという扱い難い素材にも関心を示し、十数点のガラス作品の制作を、E.コンスタンチーニと共作している。この「雄牛」は、その初期の作品で、闘牛の雄牛をイメージして制作した作品である。
農夫
1954年ヴェネチア
マルク・シャガール、エジディオ・コスタンチーニ作
エジディオ・コスタンチーニが、1950年代中頃より、ヨーロッパの巨匠たちに呼びかけて、ガラス彫刻の製作を行ったシリーズの1点で、マルク・シャガールのデッサンに基づいて製作された「風景」シリーズのうちの「農夫」である。シャガールのデッサンに基づいて、コスタンチーニが、製作技法や色彩にどの色のガラスを使用するか等を決めて共同制作した作品で、シャガールの絵画的特質を生かした透明感のあるガラス作品として制作されている。デザインに基づいて、鋳型を作り、その上に色ガラスパウダーで着彩して、熔解ガラスを流し込むという技法によって、レリーフ平板状の作品として完成させている。また、サインには、この企画を推進したFucina degli Angeli画廊のサインと、E・コスタンチーニのサインが入れられているのが、マルク・シャガールのサインはない。
月
1960年ヴェネチア
ジャン・コクトー、エジディオ・コスタンチーニ作
ジャン・コクトーは、エジディオ・コスタンチーニの巨匠によるガラス彫刻シリーズの企画にもっとも積極的に賛同した作家の一人で「Fucina degli Angeli」という画廊の名称も、コクトーが名命した。この作品は、三つの顔をもつ「月」シリーズの一点で、コクトーが立合って製作した作品である。作品には、画廊名と製作日、エジディオ・コスタンチーニのサインが入れられている。
リヴィオ・セグーゾ Livio Seguso
1930年 ヴェネチア ムラノ生まれ
1950年から創作活動をはじめ、長年にわたり技術の可能性とガラス独特の美を追求し、吹きガラスのマスターとなる。伝統的な技術を用い、光の作用を重視した美しい造形作品はヴェネチア・ピエンナーレ フィレンツェ賞など数多くの賞を受賞。
リヴィオ・セグーゾ展示室
ソスペンシオーネ
1980年
3枚のガラスがバランスよく1本のワイヤーで吊され、空中に浮かんでいるかような作品。気泡を含んだ3つのガラスに前後から羽のようなガラスを掛けることで、周りの曲線が重なり合い、空間の広がりを見せています。
ヴェジタツィオーネ
1995年 ─野外展示作品─
樹木が風になびいているかのような動きさえ感じられるこの作品のタイトル「ヴェジタツィオーネ 95」は、イタリア語で植物が群を成して伸びゆく様を示す言葉です。風によって形作られたようになびくパイプ状の透明なガラスに、季節の移り変わりや一日の光の変化を映し出し、周りの自然との調和を作り出しています。
デイル・チフーリ Dale Chihuly
1941年 ワシントン州 タコマ生まれ
ワシントン大学在学中にガラスと出会い、ヴェネチアン・グラスの伝統に強い影響を受ける。1992年にはアメリカ発の人間国宝に認定。生命力にあふれるのびやかなフォルムと鮮やかな色彩が印象的なガラスの世界において一つの将来性をみいだしている。
デイル・チフーリ展示室
マキア
1981年〜
「マキア」はイタリア語で「斑点のある」という意味を持ちます。このシリーズはアメリカのシアトルにあるチフーリのスタジオに揃っている色ガラス棒300種を使って作品を制作するというアイデアから始まりました。カラフルな色の組み合わせと流動的な形に特徴があります。
パラッツォ・ドゥカーレ・シャンデリア
1997年 ─野外展示作品─
この作品は当館と「ヴェネチア市立ムラーノ・ガラス美術館」が1996年に姉妹提携を結んだ記念として2点制作され、一つは箱根ガラスの森美術館に、もう一つは「ヴェネチア市立ムラーノ・ガラス美術館」に展示されています。
季節・企画展により展示作品・館内レイアウトが変わる場合がございます。